最初にプラバンというものを知ったのは、小学生の頃でした。たしか学校か学童保育で初めてプラバンを作って、それがとても楽しかったので、家でも母や姉と作るようになったんだと思います。詳しいことはあまり覚えてないんですけど、とにかくすごくハマって。学童保育では絵を描く時間も多かったので、自分の絵でプラバンを作る、っていうのが楽しかったんですね。
大学卒業して間もない頃、自分のイラストを使って何か作りたいな、って思った時にインクジェットのプラバンシートっていうのをお店で見つけて。あ、プラバン懐かしいな、昔すごいハマったな、これで何か出来そうだな……っていうので手に取ったのが、大人になってからプラバンを始めたきっかけです。インクジェット対応のものは薄いやつなんですけど、ぺらぺらでプリンタに通せたのでパソコンから描いたイラストを印刷して、切り取って焼いてみて……で、ハマったんですよね(笑)
ただしばらくは印刷のものが中心で、手描きになったのは結構経ってからでした。2011年くらいかな、友達と定期的にやってるグループ展がありまして、そこで毎回何かしらワークショップを開催しているんですね。じゃあそろそろ私の番かなって時に、プラバンのワークショップを開こうということになって。
パソコンやプリンタを持って行っても使いづらいかなと思って、それじゃあ基本に戻って手描きにしよう、と試作してみたらこれが面白くて、改めて手描きでのプラバンにもハマった感じです。それで家にある画材を片っ端から試していって……その中にポスカがありました。
ポスカに出会ったのは学生の頃。美大を受験したので、絵や漫画なんかを描くときのポスターカラーの手軽版、という認識でした。最初に使った時の記憶はないですけど、大学の頃には使ってたかなぁ……高校生……18くらいの時には使ってたんじゃないですかね。彫刻科だったんですけどそういえば金属とかに名前を描くときにもみんなポスカ使ってたし、じゃあプラスチックにもいけるよな、と思って試してみたらこれが結構よくって、そこからポスカでの着色が中心になっていきました。その時はまだ好きな色しか持っていなかったので、全色買って……今ではもう、使いまくってますね。家になければポスカとの出会いはもう少し遅かったかもしれないので、あの時家にポスカがあってよかったです。
デザイン自体は結構思いつきで生まれることが多いです。あとはリクエストってこともありますね。全体的に多いのは動物もの。それから、大相撲が好きなのでそれも結構取り入れてます。個人的には結構幾何学的な、これ、というモチーフや意味のないものも好きなんですけど。
実際線画でデザインを考えるときにはあまり色は意識していないんですけど、いざ作るっていう段階では色々試しますね。定番の組み合わせや、例えば動物でもその動物らしい色だと飽きてきちゃうというのもあって……わりと自由に考えてます。塗ってみて失敗だった、ということもあるんですけど、せっかくなので色んな組み合わせを楽しみたいんです。
迷ってる時は、一度紙に描いてみて相性を見たりもしますね。これは私の好みなんですけど、パキパキっとした鮮やかな発色のものが好きなのでそういう色を使うことは多いです。去年発売したコーラルピンクや、寒色だとスカイブルーやパステルグリーン。ポスカのいいところは早く軽く塗れて、発色がいいところですよね。
気をつけているのは、あまり細かいデザインにし過ぎないこと。元々のプラバンは出来上がりの6倍くらいの大きさなんですね。焼くことで縮んで厚みも出るので、完成品は細かく見えるデザインも実は結構大味だったりする。逆に、デザインの段階であまり細かいことをしても縮んだときに潰れてわからなくなっちゃうんです。だから、わかりやすく。
相撲や動物以外だと、布やプリント生地が好きなのでそういうものの影響がデザインに反映されているところはあると思います。昔、古い布を集めていたこともあったし、そういうものを触っているのも好きなので。
焼くときは一番緊張しますね。結構勢いよく縮むものも中にはあるんですけど、そうするとデザインによってはひっくり返ったりもしちゃいますし。失敗も稀にですけど未だにあるので、焼いてる時は目が離せないですね。
小学生の頃に作ったものはアルミホイルの上で焼いていて、たぶんその上からプレスしたのでちょっとあとがついていたんですね。アルミホイルはプラバンがくっつかないように、くしゃくしゃっと一回丸めて広げてから使うので。基本的には平らな場所で、平らなものを使ってプレスすれば綺麗に仕上がるんですけど、どうしてもあとがついてしまうな……という時には布を挟んであえてテクスチャをつけてみたりもします。そうすると雰囲気も出るし、失敗も少なくなるし。ちょっとした小技です。
昔から好きだったというのもあるんですけど、印刷で作っていた頃から大相撲っていうのは私の作品の一つのモチーフになっていて。プラバンとしても、お相撲さんはなんというか……細くないので、太い、大きなモチーフになるという意味で、そういう点もむいていたのかなと思います。細長いものはプラバンとして作りにくいんですけど、お相撲さんのイラストは画面も埋まるし、存在感もあって映えるんですね。
作る上でモデルにしている方、というのは特にいません。イメージとして、お相撲さんらしいお相撲さん、というのが多いですね。イラストだと細いお相撲さんを描いたり、あとはプライベートっぽい、眼鏡をかけて浴衣を着ているようなお相撲さんを描いたりもするんですけど……このあたりは結構マニアックかな、と。
自分のイメージで、関取さんぽい、とか横綱っぽい、とか考えながらデザインと着色はしています。ただ個性がないように描いていくと、逆に「あ、○○に似ちゃったな」とか自分では思ったりするんですけど。いっぱい描いていくとちょっとずつ変えたくなっちゃう気持ちもあるので、肌の色とか表情も様々です。
肌の色で主に使っているのはうすだいだいか新色のパステルオレンジなんですけど、実は肌はちょっと凝ったこともしていて。ポスカ同士で色を重ねてみたり、ポスカを塗ったあとに色鉛筆で塗ったり……ということもしているんですね。ポスカで色を重ねる、というのはお相撲さんの肌に限らず他のモチーフでもたまにやる着色方法で、例えば私が一番使う色は白なんですけど、淡いパステルカラーにしたい時にも白をベースにしてから他の色を上から重ねたり。そうすると表面から見た時にちょうどいい色合いになっていたりするんです。白だけじゃなく、最初に薄めの色を塗って、乾いてきてから別の色を重ねるのがコツですね。
本当は化粧まわしのデザインについてはもっと凝りたいんですけど、やっぱり細かすぎるものは焼いた時に潰れてしまうので……表情とか、あとは髪色なんかでも個性を出したりしてます。今相撲が好きな女性も増えているらしいので、モチーフとしてもかわいいと思っていただけると嬉しいですね。
今回、ポスカとミニサイズのプラバン、それから私がデザインした図案がセットになったものが限定発売されるんですが、これは初心者の方でも手軽に始められるかなというアイテムになっています。基本的に必要なものが全部揃っているので。とりあえず、まず一回やってみたら楽しい、って思ってもらえると思います。あとは小学校の時プラバンをやったことがある……なんて方はとっつきやすいかも。
プラバンの着色画材としてのポスカの魅力は、発色の良さなんですね。あとは絵の具なんかと違って、すぐに色が塗れる手軽さ。そういうところで、初心者の方でも使いやすい画材だと思います。最近新色(ナチュラルカラー)が出ましたし、8月にもまた新しい色(ダークカラー)が出てどんどん色も豊富になっているので長年使っている身としてはそれも嬉しいですね。
ポスカは不透明なので、プラバンの裏面から塗って、表面には顔や模様を描く……なんていう風にデザインされている図案もあります。若い方たちにもっとプラバンを楽しんでもらいたいなということで、今回はイヤリングなんかにもしやすいシンプルなデザインのものも入れました。元々作っていたものをアレンジして、というものもありますけど、基本的には今回考えたオリジナルデザインです。興味あるな、という方にはここから初めてどんどんやっていってみてもらいたいですね。最初は失敗しないように、って気を張っちゃうところもあると思うんですけど、もう、大らかな気持ちで! 最終的に小さくなるので、ちょっとしたミスは案外わからなくなっちゃいます(笑)
色塗りにしても、丁寧に塗りすぎて厚塗りにしちゃうと逆に焼いた時にもこっとなっちゃったりするんですね。だから逆に、多少色ムラがあるくらいでもさささっと塗るのでちょうどいい。それもやっぱり、小さくなるとわからなくなるので。もしもっとしっかり色を定着させたいっていうときには、プラバン自体に一度やすりをかけると綺麗に色が入ります。あとは私の場合、塗った後に一度ティッシュで押さえてマットにしたりもしてますけど……初めてだったらもう、まずやってみる。図案には作り方も書かれているので、その通りに進めていったら結構簡単に出来ると思うので。焼くときにちゃんと見ておいて、あとは取り出す時もやけどしないように軍手をしたり箸を使ったり……そこはちょっと、気をつけた方がいいポイントかな。
自分で作ったものってそれだけで愛嬌があるので、多少失敗しても愛着が沸くんですよね。私の友達にも普段から自分が作ったプラバンアクセサリーを身に着けている子は多いので……ひとまず試してみてください。一度やってみたら楽しさはわかってもらえると思うので、色んな人にプラバンの魅力がもっと伝わっていけば嬉しいですね。